Emacs 25.x build on Cygwin

目次

1 この文書は

2018年6月時点でCygwinパッケージでは Emacs 26.1が配布されています。 Emacs 25.x系のビルドを新たに行う事は無いかも知れませんが、26系で致命的な不具合があった時 の一時しのぎで古いバージョンが欲しい場合などに向けて、「Emacsの雑記」の25.xのビルド方法 の文書を切り出しました。個人的には本文書が「役に立つ事が無い」のを願います。

2 Emacs-W32 on Cygwinについて

TANEが2013年頃からメインに使用しているのはCygwinのEmacs-W32です。 Cygwin上で動作しながらもウインドウ描画などはWindowsネイティブ で動作するという、ありそうで何故か無かった組み合わせです。 Cygwin上で動作するのでDLL依存がありますが、外部プロセス実行で発生するもろもろの問題が 解決される(解決が容易になる)利点があります。 ただ、CygwinでパッケージインストールしたEmacs-W32では、MeadowやNTEmacsのようにMS-IMEを使用する ことはできません。そこで、NTEmacsからIME制御部分(いわゆるIMEパッチ)をEmacs-W32とマージして 使用しています。

rzl24ozi氏の作成されたパッチ が IMEパッチのデファクトスタンダードとなっています。 ところが、24.4をTANEの環境下でCygwinで野良ビルドして使用していると、IME入力中に 何故かSegmentFaultで落ちる場合があった為、以降自前パッチを使用しています。 もしセカンドソースとしてお役に立つ事があれば幸いです。

パッチはEmacs-25.1をベースにしていますが、25.2および25.3にも適用可能です。 以下手順では25.1で説明していますが、その他のバージョンの場合はパッチファイル名 以外の25.1という文字列を読み替えて適用してみてください。

  1. 予めCygwinパッケージのemacs-w32(25.1)をインストールしておきます。
  2. Cygwinでビルドします。ビルドに必要なツールやライブラリが揃ってなければ揃えてください。 emacs-25.1のtar-ballは適当な所から拾ってください。 パッチは emacs-w32_25.1_20161015.patch.xzをダウンロード してください。
  3. 適当なディレクトリで 以下の手順でビルドします。2.でダウンロードしたファイルは ~/Downloads ディレクトリ下に置いてあるものとしています。

    xz -dc ~/Downloads/emacs-25.1.tar.xz | tar xf -
    cd emacs-25.1
    xz -dc ~/Downloads/emacs-w32_25.1_20161015.patch.xz | patch -p1
    ./configure --prefix=/usr --with-w32 --without-imagemagick
    make
    
  4. /usr/bin/emacs-w32.exe をビルドしたsrc/emacs.exe で置き換える。 元の実行ファイルは別名で退避しておくのが良いでしょう。
  5. lisp/international/w32-ime.el と lisp/international/w32-ime.elc を/usr/share/emacs/25.1/lisp/international/. にコピーする。
  6. 以下の設定を.emacs(オールドスタイルですみません)に追加する。

    ;;
    ;; IME setup
    ;;
    (set-language-environment "Japanese")
    (if (eq 'w32 (window-system))
        (progn
          (load "international/w32-ime")
          (setq w32-ime-buffer-switch-p nil) ; 全バッファでIME状態同期
          (kill-local-variable 'w32-ime-mode-line-state-indicator)
          (setq default-input-method "W32-IME")
          (setq-default w32-ime-mode-line-state-indicator "[-]")
          (setq w32-ime-mode-line-state-indicator-list '("[-]" "[あ]" "[-]"))
          (w32-ime-initialize)))
    

以上で使えるんじゃないかと思いますが、エラーとか出た時はうまく対応してください(^^;

パッチのざっくりした内容や注意事項は以下です。

  • IMEパッチ自体は24.4,24.5向けに emacs-24.2-ime-2012-09-02.patch.tar.gz(リンク切れ)と emacs-24.3-ime-2013-05-03.patch.tar.gz(リンク切れ)を 元にしていました。2013-05-03ではMinGW特化されてしまってそのままではCygwinビルドできなかった為、 ダメだった所は2012-09-02を使用した感じになってます。25.1向けには24.5向けのパッチを元にしています。 また、rzl24ozi氏作成のパッチも一部参考にさせていただいてます。
  • IMEは全バッファで状態同期するモードで使用しています。termモード でバッファ再描画を非同期に行った際、IME制御の構造上の問題で勝手に入力確定される場合が あった為です(参考)。ただ、単純に w32-ime-buffer-switch-pをnilにしただけではインジケータの再描画がうまく対応できていなかった為、 lisp/international/w32-ime.elに少し手を入れています。
  • オリジナルではJPEG画像表示の時に減色されてしまうのですがフルカラー表示に強制しています (参考)。
  • imagemagickパッケージはconfigure実行時に意図的に外しています。 含めてもビルドは完了すると思いますが24.3の時には動作不安定な実行ファイルが できあがりました(参考)。 24.4,24.5,25.1ではpdf-tools との相性が悪かった為 (参考)、 引き続き意図的に外してビルドしています。
  • Cygwinでのビルドしか考えてませんのでconfigure.batはメンテしていません。
  • termモードのターミナルエミュレーション表示が遅い点を改造しています (参考)。
  • nyan-modeのような run-with-timer関数を使用したアプリで、time-add関数が 「Specified time is not representable」のメッセージでエラーする場合に対して ワークアラウンドを入れました (参考)。副作用としてtime-add関数の引数に非数(NaN)を 与えた場合(例えば (time-add (/ 0.0 0.0) 1.0) とか)でもエラーにならずに非数を0に変換して 値を返します。

3 履歴

  2018/06/04 : 「Emacsの雑記」から分離。

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著者: TANE